リレーインタビューVol.3 | チャイルドライン

リレーインタビューVol.3


チャイルドラインこそが、混沌の中から子どもたちを救い出す
2007年2月14日
ノンフィクション作家
家田 荘子 様
プロフィール

これまで光の当たっていなかった世界や人々にスポットを当て、取材することによって社会問題を提起する異色の作家、家田荘子さん。アメリカ取材で2年かけた「私を抱いてそしてキスして?エイズ患者と過ごした一年の壮絶記録?」(文藝春秋)で、第22回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。また、フライデーで連載された「渋谷チルドレン」(講談社)では、高校生の素顔に迫り、世の大人たちに衝撃を与えました。。

「極道の妻たち」®「代議士の妻たち1、2」 「バブルと寝た女たち1?3」 「私を抱いてそしてキスして」 「姐」 「惚れたらあかん」 「ごろつき」など、30作品以上が映像化されているほか、ノンフィクション作品、コミックの原作や恋愛エッセイ、小説にも定評があり、著作は113作品に及びます。そんな家田さんにお話をうかがいました。


子どもたちのことがいま、たいへん話題になっていますが。

そうですよね。子どもの世界で起きている問題の根っこは、すべて大人にあると思います。まず、自分のことで忙しい大人がふえてきて、子どもたちの話をきかなくなりました。

子どもたちは話そうとしても大人に拒絶され、話す意欲もなくなってしまっている。子どもは社会的には弱い立場にいるので、大人のほうから手を差し伸べないと(きこうと思わないと)、なかなか切り出せません。

説教をしないで、否定もしない大人に話をきいてもらい、光が少しでも見えるような大人のサジェスチョンを子どもたちは待っています。それができると、子どもたちは自分自身で考えられるようになります。

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それって、チャイルドラインの精神そのものなんですけれど。

だから、チャイルドラインの話を初めてきいた1年前、わたしは「これだ」と確信し、鳥肌がたつような感動をおぼえました。そう、チャイルドラインだったら、子どもたちを混沌のなかから救い出し、子どもが本来もっている天衣無縫さを取り戻せるかもしれないと。
 
家田さんにそうおっしゃっていただけるとすごくうれしいです。

実は、わたしにはひとりの少年との忘れられない出会いがあります。父親は大会社の営業職、母親はPTAの役員をやっていて、とても裕福で、他人からうらやましがられるようなエリート一家です。お父さんのような立派な人になりたいと、少年は一生懸命勉強して、成績優秀でした。

でも、そのうちストレスがたまり、少年は15歳のとき、クスリに手を出してしまった。いやなことが忘れられて、楽になったのも1日だけ。あとは辛いばかりでした。やがて母親にばれてしまう。父親は単身赴任、母親は「やめなさい」とおろおろするだけ。

少年は家のなかのものをこわしはじめ、母親に暴力をふるい続けました。そして、体もこころもボロボロになり、病院に。赴任先からかけつけた父親は少年を抱きしめ、頭をたたきながら「ばかやろう、ばかやろう」と涙を流した。少年は痛いので泣いて、うれしいので泣いて、そして父親のぬくもりを初めて知ったんですね。

この親子は不器用なだけで、根底には愛情があるから立ち直れたんです。このときに「苦しいよお、苦しいよお」「助けて、助けて」と、少年はこころのなかで叫んでいました。そのとき、もしチャイルドラインがあったら、チャイルドラインの番号を知っていたら、少年はクスリに手を出さなくてすんだかもしれない。それはやっぱり、大人の責任だと思います。
 
ところで、ご自身の子ども時代はどうでしたか。

わたしもひとりっ子で、教育熱心な母親に育てられました。母を知るひとや先生が「あなたのお母さんはすごかった」というほどで、廻りも母もそれをわたしにも求めるんですね。100点をとるのは当たり前で、いつもいつも勉強ばかりしていた。学校ではいじめられ、つらくて泣きながら家に帰ると、「いじめられるほうが悪い」と母に叱られ、いつしか死ぬことばかりを考えるようになっていました。

そのとき、チャイルドラインがあったら、どんなによかったでしょう。わたしの友だちは猫だけでしたから。
 
エイズ患者さんとか、極道の妻とか、おもに光のあたらないひとを取材されているのは、ご自分の体験が下敷きになっているんですか。

ええ。世の中、弱者に光が当たっているようで、実はあたっていません。差別がいっぱいあって、権利侵害されているひとがいて、ほんとうの弱者には目が向けられていません。もちろん、子どもたちもそのなかに入りますが・・・

言いたくても言えないひと、子どもたち。そういう光のあたっていないところに、わたしは光をあてたいんです。
 
さすがですね。家田さんの真骨頂というか、作家魂にふれた思いです。

でも、わたしは本当は、女優になりたかったんです。いまでも、ちょっと出たい(笑)。生活のために文章を書いたんですが、「極道の妻たち」®シリーズの五社英雄監督にも「家田には女優の才能がない」と言われて。「極道の妻たち」の?には、宣伝で出してもらいましたが、そのあとからは出してくれない。そして、15作目になってまた、やっと出してもらえたんです(笑)。
 
うーん、家田さんと一緒に仕事をさせていただいたり、話をしていると、五社監督の気持ちもわかるような気がします。だって、家田さん、ほんとうに控えめなひとだから。最後に、これからの夢を聞かせてください。

10年前から神仏の行をやっていて、時間をつくってはおへんろに行き、深夜の水行や霊山行は年中です。将来は女のひとの「駆け込み寺」をやりたいですね。今は相談するには高いお金が必要なところが多いですよね。わたしはそれをしたくないから、作家として働き続けながら、駆け込み寺をやりたい。女は男の後ろで支えて、ずいぶん苦労しているひとが多いですよね。

また、チャイルドラインの現場にうかがって、とくに受け手のひとたちが子どもたちを何とかしたい、手をさしのべたい、と真剣に本当に一生懸命やられている姿にものすごくこころを打たれました。みんな一人ひとりが子どもたちを大切にしたい、そういう気持ちでいたら、もっともっとチャイルドラインは広がって、もっとたくさんの子どもたちが電話をかけられるようになるのではないかなと思います。そのために、わたしにもできることがあったら、お手伝いさせてください。
 
インタビューを終えて

「関西のほうのレギュラー番組で、チャイルドラインのことを話したくても、番号が一緒じゃないから話せないんですよ」家田さんは、ちゃんと自分ができるところから協力してくださる有言実行のひと。早く、日本のどこからでも同じ番号でかけられるチャイルドラインになれるよう、がんばります。家田さん、これからもいい仕事をして、わたしたちに新しい世界をみせてください。そして、修行もがんばって。応援しています。

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